飲食店のM&Aは個人でもできる?失敗しないための注意点も解説!

飲食店 M&A 個人

飲食店をM&Aで買う、と聞くと「法人じゃないと無理そう」「大きなお金が動きそう」と身構える人が多いです。ですが実際は、条件さえ合えば個人でも引き継ぎは可能です。

ただし、個人がつまずく典型も決まっています。買収そのものより、賃貸借の承継が通らず営業継続が崩れる、数字が不透明で利益が出ない、許認可や名義変更が詰まって開業が遅れる。こうした地雷は、契約前に落とせます。

そこで本記事では、結論→必要条件→失敗しない確認順の3段で、個人が最短でGO/NO-GO判断できるように整理しました。

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目次

飲食店のM&Aは個人でも可能だが、選ぶ形と条件が重要

結論として、個人でも飲食店のM&Aは可能です。ただし「どの形で買うか」と「最低限クリアすべき条件」を間違えると、買った瞬間に詰みます。

個人が狙うべきは、背負うリスクを絞りやすい形で、かつ営業継続の前提(賃貸借・許認可・主要アカウント)が成立する案件です。ここが揃っていれば、あとは数字の妥当性と引継ぎ設計で勝負できます。

個人は事業譲渡が基本になりやすい理由

個人が飲食店を引き継ぐなら、まずは事業譲渡を基本に考えるのが現実的です。理由はシンプルで、引き継ぐ範囲を「選びやすい」からです。株式譲渡は会社そのものを引き継ぐ形なので、見えにくい債務や過去のトラブルまで丸ごと抱える形になりやすく、個人がコントロールできる余地が小さくなります。

一方、事業譲渡は「何を買うか」を契約で切り分けられます。例えば、厨房機器や内装、商号、レシピ、顧客リスト、予約台帳など、必要なものだけを対象にしやすいです。

逆に、引き継ぎたくないもの(不要な在庫、曖昧な契約、名義が動かないアカウントなど)を除外したり、条件を付けたりできます。個人にとって重要なのは、価格交渉よりもリスクを絞る設計なので、この相性が大きいです。

個人が手を出してよい案件の現実ライン

個人が勝ちやすいのは、背負う固定費と引継ぎ難易度が低く、数字の見通しが立つ案件です。逆に、規模が大きいほど専門家コストも運転資金も増え、引渡し後のブレを吸収しにくくなります。

現実ラインは、取得対価だけで判断せず、資金の箱を分けて見たときに「最悪でも耐えられるか」で決めるのが安全です。資金は、最低でもこの3箱で考えます。

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資金の箱中身個人で崩れやすいポイント
取得対価譲渡代金、仲介手数料、契約関連費代金に寄せすぎて、運転資金が薄くなる
運転資金家賃、人件費、仕入、光熱、広告など数か月分引継ぎ直後の売上ブレで資金が尽きる
予備費設備交換、名義変更の遅れ、追加対応のための枠想定外を吸収できず、借入が増える

この箱分けをしたうえで、個人が手を出してよいかを判断する目安は「運転資金と予備費が削れていないか」です。取得対価が安く見えても、引継ぎ直後はスタッフの離脱や常連の減少、集客導線の作り直しで売上が落ちやすいです。

さらに、予約システム、決済、POS、Googleビジネスプロフィールなど、名義変更がスムーズにいかないと売上の回復が遅れます。個人は耐久力が限られるので、派手な価格より、引渡し後に安定するまで耐えられる厚みがある案件を選ぶのが正解です。

契約前に落とすべき地雷3つ|ここで8割決まる

契約書

個人の飲食店M&Aは、契約前の足切りでほぼ勝負が決まります。

理由は簡単で、契約後に判明しても取り返しがつきにくい論点が「賃貸借」「数字」「許認可と名義変更」に集中しているからです。ここで曖昧なまま進めると、引継ぎ自体が成立しない、買ったのに利益が出ない、開店が遅れて家賃だけ出ていく、といった事故が起きます。

賃貸借の承継・再契約|貸主承諾が取れないと成立しない

店舗が賃貸の場合、買う側にとって最大の地雷は「貸主の承諾が取れない」ことです。売り手と譲渡契約を結んでも、賃貸借が新しい名義で成立しなければ営業を続けられません。

さらに、承諾は取れても条件が悪化して資金計画が崩れることもあります。ここは感覚ではなく、条件と手続きを書面で固めてから進めるのが基本です。

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確認項目チェックの意味赤旗になりやすい例
貸主承諾の要否と手順誰の承諾で、いつ確定するか「たぶん大丈夫」で書面が出ない
再契約か名義変更か条件が変わる可能性を読む保証金増額、家賃改定、更新期間短縮
用途・業態の制限やりたい業態が許されるか臭気・騒音で火気や深夜営業が制限
工事承認と指定業者改装の自由度と工期の読み指定業者必須で費用と日程が膨らむ
原状回復の範囲退去費用の上限を読むスケルトン同等が前提になっている

賃貸借の論点は、価格交渉より優先です。貸主承諾が「条件付き」になるなら、その条件が資金計画に耐えるかを先に当てます。

承諾が口頭止まりなら、解除条件や引渡し条件に落とせない限り、個人は踏み込まないほうが安全です。

数字の開示|売上と利益が見えない案件は見送る

数字が見えない案件は、個人にとってギャンブルになります。

飲食店は、売上が同じでも原価と人件費のバランスで利益が全く変わりますし、売り手の働き方(オーナーが現場に出ているか)でコスト構造も違います。最低限の数字が出ないなら、安くても見送るほうが合理的です。まずは、契約前にこれだけは見たい、という開示物を絞って押さえます。

  • 月次の売上推移(最低でも直近6〜12か月)
  • 原価率と人件費率の実態が分かる資料
  • 家賃、光熱、販促など固定費の内訳
  • 税務申告の整合が取れる資料(ざっくりでも照合できるもの)
  • オーナーの労働がどれくらい入っているか(抜けた場合の追加人件費)

個人がやりがちな失敗は、売上だけ見て安心することです。大事なのは「自分が引継いだ後の利益が残るか」です。オーナーが無給同然で回している店だと、引継ぎ後に人件費が増えて利益が消えることがあります。数字が出ない、出ても整合が取れない、説明が毎回変わる。こういう案件は、値段を下げても危険度が下がりません。

許認可と名義変更|引継げないものを先に確定する

許認可と名義変更は、開業延期を生む地雷です。飲食店営業に関わる許可は名義が絡み、前オーナーのものをそのまま使える前提で動くと危険です。

さらに、今は売上導線が店舗設備よりもアカウント側に寄っている店が多く、名義変更できないと集客がガタつきます。個人のM&Aでは、この「営業に必要な名義の束」を引継げるかが想像以上に重要です。

文章だけで整理すると、確認の順番はこうなります。まず、営業に必須の許可が何かを洗い出し、現状の許可名義と手続きの流れを把握します。次に、店舗運営に必須のアカウント(予約、決済、POS、Googleなど)を列挙し、名義変更が可能か、引渡し時にIDと権限を渡せるかを確かめます。最後に、名義変更に時間がかかるものがある前提で、引渡し日と開店日を無理に詰めない計画にします。

最低限DDと契約で守る|個人でもできる安全対策

契約

足切り(賃貸借・数字・許認可/名義変更)を通ったら、次は最低限のDDで赤旗を潰し、契約で守ります。個人が全部を完璧にやろうとすると疲弊しますが、飲食店M&Aで致命傷になりやすいのはだいたい決まっています。

未払やリース、滞納などの支払い系、労務トラブル、そして運営に必要な契約やアカウントの引継ぎ漏れです。ここを短時間で押さえ、価格交渉よりも「保証」と「引継ぎ支援」と「解除条件」で失敗確率を下げるほうが個人向きです。

簿外債務チェック|未払・リース・滞納を確認する

簿外債務は、引継ぎ後に突然出てくる請求のことです。個人が一番避けたいのは、買ったあとに資金が抜かれて運転が止まる展開なので、ここは最優先で確認します。

事業譲渡であっても、未払いがあると仕入先との関係が悪化したり、設備の名義が曖昧でトラブルになったりします。確認は細かい理屈より、支払いの実態に寄せるのが現実的です。

  • 仕入先・外注先の未払
    ↳買掛金、月末締めの支払い状況、滞納の有無
  • 家賃・共益費・水道光熱の滞納
    ↳管理会社や検針の請求の遅れも含めて確認
  • リース・割賦・レンタル
    ↳名義、残期間、残債、解約条件、引継ぎ可否
  • 税金や社会保険の未納
    ↳納付状況が曖昧なら赤旗として扱う
  • 預り金・前受金
    ↳予約の預り金、回数券などの扱い

実務では、通帳の出金履歴、請求書の束、リース明細、家賃の支払証跡など、現物の証拠が出るかが勝負です。証憑が出ないものは「無い前提」ではなく「あるかもしれないリスク」として扱い、取得対価の調整や、契約での保証、引渡し条件に反映します。

労務と運営のチェック|未払い残業とスタッフ離脱を防ぐ

飲食店は、人が抜けた瞬間に回らなくなります。引継ぎ直後の売上ブレより先に、スタッフが辞めてシフトが組めない、という形で詰むこともあります。加えて、未払い残業や社会保険まわりの不備は、後から噴き出すと精神的にも金銭的にもきついです。個人が狙うべきは、完璧な労務監査ではなく、爆発しそうな火種が無い状態を作ることです。

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確認対象見るべきもの赤旗になりやすい状態
スタッフ構成人数、役割、シフト、キーパーソン特定の人に業務が集中している
雇用条件雇用契約の有無、時給/給与、手当口約束が多く条件が曖昧
勤怠の実態タイムカード、勤怠アプリ、残業の発生記録が無い、長時間労働が常態
未払いリスク残業代、休日手当、退職金の扱い支払い方針が場当たり的
引継ぎ計画引継ぎ期間、教育担当、店長の残留引渡し日に売り手が消える前提

スタッフの離脱を防ぐには、買収後に急にルールを変えないことも大事です。まずは現場を安定させ、給与や勤務条件の変更は段階的に行う。売り手に一定期間残ってもらい、仕込み、発注、常連対応のコツまで移管する。これだけで、引渡し直後の事故がかなり減ります。

契約で固める条項|表明保証・引継ぎ支援・解除条件

個人が交渉で勝ちやすいのは、価格よりも条項です。理由は、売り手も「少し値引くより、後から揉めない形」に納得しやすいからです。契約条項で守るときは、難しい言葉を並べるより、失敗パターンに直結する論点だけを押さえるほうが現実的です。

押さえる条項は、次の3本柱に寄せると整理しやすいです。

  • 表明保証
    ↳未払やリース、重要契約、許認可、数字の真実性を売り手が保証する
  • 引継ぎ支援
    ↳一定期間の同席、仕入先紹介、レシピ・オペレーションの移管、アカウント移行の実務支援
  • 解除条件と引渡し条件
    ↳貸主承諾、許認可の見通し、主要アカウント移行が未達なら白紙にできる

特に効くのが解除条件です。貸主承諾が取れない、許認可の見通しが立たない、予約や決済の名義が移せない。このどれかが崩れると営業が止まるので、条件未達なら解約できる形にしておくと、個人の致命傷を避けやすくなります。

引継ぎ支援は、売り手の協力度で成否が変わるので、期間と範囲を曖昧にせず、何をいつまでにやるかを文章に落とすのがコツです。表明保証は、万一のときに争点を明確にする意味があり、証憑が出ない論点ほど保証に寄せる発想が有効です。

まとめ

個人でも飲食店のM&Aは可能ですが、選ぶ形と条件が重要です。個人は引き継ぐ範囲を選べる事業譲渡が基本で、資金は「取得対価・運転資金・予備費」の3箱に分けて考えます。

契約前に落とすべき地雷は3つ。

  • 賃貸借の承継(貸主承諾が取れないと営業継続できない)
  • 数字の開示(売上・利益が見えない案件は見送る)
  • 許認可と名義変更(引継げないものを先に確定する)

最低限のDDでは、未払い・リース・滞納などの簿外債務と、労務トラブル・スタッフ離脱リスクを確認します。契約では価格交渉より「表明保証・引継ぎ支援・解除条件」の3条項で守る方が個人向きです。

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この記事を書いた人

出水祐介のアバター 出水祐介 公認会計士/税理士

公認会計士/税理士。ファーストキャリアをデロイトトーマツでスタートし、日本を代表する大手上場企業の監査に携わる。その後、ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)、コンサルティング会社でM&A事業責任者を経て、会計事務所を設立。現在は、個人事業主やベンチャー企業、中小法人など、幅広いクライアントに対して、会計税務やM&Aの専門的なアドバイスを提供しています。

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