居抜き物件のよくあるトラブルとは?具体的な事例も4つ紹介!

居抜き物件

「居抜きなら初期費用を抑えられるはずだったのに、契約後に追加工事が次々と判明した――」。飲食店や美容サロンの開業現場では、こんな苦い経験談が後を絶ちません。中古設備の故障、造作譲渡代の不透明さ、退去時の原状回復など、居抜き物件には見えにくい落とし穴が潜んでいます。

そこで本記事では、契約前のチェックリストからトラブル発生時の交渉手順までを一気通貫で解説。法律・賃貸借・設備の専門知識を、初めてテナント契約を結ぶ方にもわかりやすい言葉で整理しました。

このページでわかること

  • 居抜き物件で起こりやすいトラブルの全体像
  • 契約前に確認すべきチェックポイントと必要書類
  • 造作譲渡代・修繕費を抑える交渉の要所
  • トラブル発生時の初動対応と専門家へ相談する目安
  • 退去時まで見据えたリスク回避のコツ
目次

居抜き物件トラブルの実態とリスク

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新装より初期コストを抑えられる一方、居抜き物件は「隠れた修繕費が高額」「退去時の原状回復で想定外の出費」という落とし穴が多いのも事実です。

中古設備の寿命や契約条項の曖昧さが重なると、開業直前に資金繰りが揺らぐこともあります。ここでは代表的なトラブルの種類と発生要因、そして未然に防ぐための視点を整理します。

よくある居抜き物件トラブル事例

実際の現場で頻発するケースを把握すると、自店舗に当てはめたリスク洗い出しがスムーズになります。

  • 厨房機器の急故障
    ↳引き渡し後すぐに冷蔵庫が冷えず修理費が自己負担
  • 給排水・ガス配管の老朽化
    ↳閉店期間が長くサビが進行し開業準備が遅延
  • 造作譲渡代の過大請求
    ↳減価が反映されず中古品に新品同等の価格が付く
  • 原状回復範囲の食い違い
    ↳「入居時の状態」で返却と記載されていたが実際はスケルトン返却を要求された
  • 残置物の所有権争い
    ↳誰が撤去・保管費用を負担するか明確でなく開業日が延びる

各事例の共通点は「責任と費用負担の線引きが曖昧なまま契約が進んでいる」点です。似た状況がないか早い段階で確認しましょう。

トラブルが起こる背景と原因分析

次の表に、契約交渉の場で見落とされやすい要因とその影響度を整理しました。

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主な要因具体的な内容リスクの大きさ
設備寿命のブラックボックス化耐用年数・修理履歴の情報不足で状態を正確に把握できない
前テナントとの利害不一致撤退コストを回収したい売り手と支出を抑えたい買い手で価格交渉が難航
貸主による管理履歴の欠如図面や点検記録が不足し隠れた瑕疵を把握しにくい
抽象的な契約条項「善良な管理者の注意」など曖昧な表現で責任範囲がぼやける
時間的制約による妥協開業期限が迫り詳細調査や交渉を後回しにしがち

要因を分類すると、情報格差・契約文言の不透明さ・時間的プレッシャーに大別できます。裏づけ資料を集め、交渉時に「数字」と「履歴」を提示できるかが鍵になります。

契約前に見逃しがちな要注意ポイント

最後に、現地調査や書類確認で抜けやすい項目をまとめます。チェックリスト化して持参すると効率的です。

  1. 設備リストと現物・試運転の整合性
    ↳型番・ランプ表示・異音の有無を突き合わせる
  2. 図面・工事履歴の取得
    ↳隠れた配管や二重天井内の設備が契約外になっていないか確認
  3. 原状回復義務の具体的範囲
    ↳壁・床・天井材をどこまで撤去するか文面で明確化
  4. 用途制限と消防法適合性
    ↳業態変更がある場合は排煙量や防火区画を消防署に事前照会
  5. 造作譲渡契約の第三者承諾
    ↳貸主が譲渡を承認しないと引き渡し自体が無効化する恐れがある

チェック項目を写真・動画で記録し、後日の証拠保全につなげると交渉時の説得力が高まります。

居抜き物件トラブルの実態と具体例

新装より初期コストを抑えられる一方、居抜き物件は「隠れた修繕費が高額」「退去時の原状回復で想定外の出費」といった落とし穴が多いのも事実です。

中古設備の寿命や契約条項の曖昧さが重なると、開業直前に資金繰りが揺らぐこともあります。ここでは代表的なトラブルの種類と発生要因、そして未然に防ぐための視点を整理します。

よくある居抜き物件トラブル事例

飲食店や美容サロンで実際に報じられた裁判・事故例を中心に、発生しやすいトラブルをまとめました。判決や報道日付を把握しておくと、同様のリスクを数値で見積もりやすくなります。

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事例概要主な争点
消防法違反で営業不可排気ダクトが基準を満たさず、借主が飲食営業を断念。
損害賠償509万円を請求するも棄却(東京高判 2021年9月15日)
営業不能による逸失利益と内装費の帰属
造作譲渡代の過大請求減価償却を無視した高額な譲渡金を提示され、交渉が決裂。
開業まで1か月遅延。
譲渡対象の範囲と価格算定根拠
残置物の所有権が曖昧前賃借人が置いていった大型冷蔵庫をめぐり撤去費が対立。
貸主が次テナントに引き渡せず2か月空室。
撤去費・保管費の負担割合
ダクト是正未処理で検査NG過去のボヤ指摘を放置したまま内装工事を実施。
消防検査で不合格となり改修費が追加発生。
是正工事費と開業遅延損失

トラブルが起こる背景と原因分析

次の表に、契約交渉で見落とされやすい要因と影響度を整理しました。

スクロールできます
主な要因具体的な内容リスクの大きさ
設備寿命のブラックボックス化耐用年数・修理履歴の情報不足で状態を正確に把握できない
前テナントとの利害不一致撤退コストを回収したい売り手と支出を抑えたい買い手で価格交渉が難航
貸主による管理履歴の欠如図面や点検記録が不足し隠れた瑕疵を把握しにくい
抽象的な契約条項「善良な管理者の注意」など曖昧な表現で責任範囲がぼやける
時間的制約による妥協開業期限が迫り詳細調査や交渉を後回しにしがち

契約前に見逃しがちな要注意ポイント

現地調査や書類確認で抜けやすい項目をチェックリスト化すると漏れを防げます。

  1. 設備リストと現物・試運転の整合性
    ↳型番・ランプ表示・異音の有無を突き合わせる
  2. 図面・工事履歴の取得
    ↳隠れた配管や二重天井内の設備が契約外になっていないか確認
  3. 原状回復義務の具体的範囲
    ↳壁・床・天井材をどこまで撤去するか文面で明確化
  4. 用途制限と消防法適合性
    ↳業態変更がある場合は排煙量や防火区画を消防署に事前照会
  5. 造作譲渡契約の第三者承諾
    ↳貸主が譲渡を承認しないと引き渡し自体が無効化する恐れがある

写真・動画での記録を作成し、後日の証拠保全につなげると交渉時の説得力が高まります。

まとめ|居抜き物件トラブルを防いで安心開業

本記事では、居抜き物件を選ぶ際に潜みやすいリスクを明らかにし、実例とともに原因を分析しました。

中古設備の寿命や曖昧な契約条項が損失を招く構造を押さえ、契約前チェックリストで実地調査と書類確認の要点を整理。さらに、消防法違反や造作譲渡代の過大請求といった具体例を通して「責任と費用の分担を文書で確定すること」の重要性を学びました。

実務に移る際は、現況写真や点検報告を必ず残し、交渉は数値と履歴を根拠に進めることが肝心です。少しでも判断に迷ったら、宅建士や弁護士へ早めに相談し、時間的プレッシャーを減らしましょう。

この記事を書いた人

出水祐介のアバター 出水祐介 公認会計士/税理士

公認会計士/税理士。ファーストキャリアをデロイトトーマツでスタートし、日本を代表する大手上場企業の監査に携わる。その後、ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)、コンサルティング会社でM&A事業責任者を経て、会計事務所を設立。現在は、個人事業主やベンチャー企業、中小法人など、幅広いクライアントに対して、会計税務やM&Aの専門的なアドバイスを提供しています。

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