居抜き物件は「すぐ開けられる」「初期費用が抑えられる」と言われがちですが、実際に詰む原因はだいたい決まっています。
しかも、契約してから気づいても取り返しがつきにくい順に並ぶのが厄介です。排水や換気、電気といった建物側の制約は直しにくく、次に造作譲渡金と追加工事で資金繰りが崩れ、最後に許可や契約で開業が遅れたり退去費用でもめたりします。
だからこそ、判断の順番が大事です。内見では「最重要3点」だけでまず足切りし、通った物件だけをお金と契約で固める。これを徹底すると、初心者でも迷わずGO/NO-GOが出せます。
飲食店の居抜き物件で必ず落とすべき注意点3選

居抜きで失敗しやすいのは、契約後に「建物側の制約」が発覚して、業態そのものが成り立たなくなるパターンです。
内装や什器はお金で調整できても、排水・換気・電気は建物の構造や共用部のルールに左右されます。内見は長居せず、最初にこの3点だけで合否を決めると判断がブレにくくなります。
| 内見で最初に見る点 | 契約前に押さえる観点 |
|---|---|
| 排水・グリスト | 床勾配と流れ、グリスト容量、配管ルートの改善余地 |
| 換気・排煙・ダクト経路 | 終点(屋上/外壁)、共用シャフト可否、清掃状態と油固着 |
| 電気容量・動力 | 主幹・分電盤・動力、幹線と受電の上限、工事ルール |
排水・グリスト|臭いと詰まりは開業後に致命傷になる
排水は、居抜きで一番あとから取り返しがつきにくいポイントになりやすいです。
臭気や詰まりは、少し直して終わりにならず、営業中断や近隣からの苦情に直結します。油を多く使う業態や、麺・米の大量洗浄が出る業態ほど排水負荷が高く、現況が軽く見えても油断できません。
内見では、床の傾きと排水の流れをまず体感で確認し、溜まりや逆流の気配がないかを見ます。次に、床排水やシンク下の匂い、トラップ周りの汚れ方で、過去にトラブルが出ていそうかを推測します。グリストラップがある場合は、容量と清掃のしやすさが現実的かが肝です。小さすぎたり、導線が悪くて清掃が回らない物件は、結局また詰まりやすくなります。
最後に大事なのが「悪かった場合に直せるか」です。床下配管のやり替えが難しい構造だったり、共用配管側の制約が強いと、改善費が跳ねるか、工事そのものが通りません。
換気・排煙・ダクト経路|行き先が確保できないと業態が成立しない
換気は「フードが付いているか」だけでは判断できません。
重要なのは、ダクトがどこへ抜けているか、そしてその経路が変更できるかです。焼く・揚げる・煙や匂いが強い業態は、行き先が弱いと最初から成立しません。成立しても、匂いの苦情で営業時間や設備に制限がかかることがあります。
| 確認ポイント | 現地で見る場所 | 赤信号になりやすい状態 |
|---|---|---|
| ダクトの終点 | 屋上、外壁の排気口周辺 | 窓・ベランダに近い、外壁で止まっている |
| 経路の種別 | 天井内、シャフト、点検口 | 共用シャフトで追加・変更が難しい |
| 清掃状態 | フード内部、ダクト接続部 | 油固着が強い、臭いが残っている |
| 能力の余裕 | ファンの型式、音・振動 | 曲がりが多く抜けが悪そう、負荷が大きい |
テーブルのうち、特に終点は最優先です。終点が弱い物件は、後から高額工事を入れても解決できないことがあるので、内見の段階で見切るほうが結果的に早くて安く済みます。

電気容量・動力|増設できないと機器が動かず追加工事が膨らむ
電気は「残っている厨房機器が動きそうか」ではなく、「自分の業態で必要な機器が並べられるか」で判断します。契約後に増設不可が分かると、機器を妥協するか、工事費を積み増すかの二択になり、どちらもダメージが大きくなります。
内見では、分電盤の大きさや空き回路、主幹ブレーカーの容量、動力(200V)の有無をまず確認します。そのうえで、建物側の上限がどこにあるかを管理側に確認するのが要点です。
盤を大きくしても、幹線や受電が頭打ちなら増やせませんし、共用部工事のルールが厳しいと工期も費用も読みにくくなります。
- 今の契約電力と主幹の容量はどれくらいか
- 動力は引き込み済みか、無い場合は追加できるか
- 幹線や受電の上限に余力があるか
- 増設工事の承認手順、指定業者、工事可能時間はどうなっているか
結局、電気は「増やせる前提」で動くと危険です。増設できない可能性を織り込んだうえで、機器構成の現実解と、追加工事が出た場合の上限額を早めに押さえるのが、資金ショートを避けるために大切です。

お金で失敗しない|造作譲渡金と追加工事をコントロールする

居抜きで資金が崩れる典型は「譲渡金を払ったあとに、交換・撤去・追加工事が想像以上に出て、運転資金まで削れる」流れです。
失敗しないためには、譲渡金を設備の定価感で見ないこと、そして工事費を一塊で見ないことが大事です。安全側に倒して上限を決め、証憑が出ないものは条件に反映し、見積もりは箱分けして漏れを潰す。この順で固めると、契約後に慌てにくくなります。
譲渡金の妥当性|交換費・撤去費・時間価値で上限を決める
譲渡金は「残っている設備がいくらか」より、「自分が開業までに払う総額をどれだけ減らしてくれるか」で判断するとブレません。
居抜きの価値は、再利用できる機器の残存価値だけでなく、撤去を免れる価値や、工期が短くなる価値も混ざります。逆に、古い機器が多いほど交換前提になり、譲渡金を払ったのに結局買い直す、という最悪の形になります。
| 項目 | 意味 | 判断のコツ |
|---|---|---|
| 再利用できる価値 | そのまま使える設備・内装の価値 | 型番・製造年・修理可否が分かるものだけを評価 |
| 交換費 | 使えないものを入れ替える費用 | 壊れる前提で見積もりを取っておく |
| 撤去費 | 残置物を捨てる、元に戻す費用 | 廃棄・搬出・養生まで含めて見る |
| 時間価値 | 工期短縮で家賃や機会損失を減らす効果 | 家賃+人件費+売上機会を現実的に置く |
考え方の骨子は、譲渡金の上限を「再利用できる価値+時間価値-(交換費+撤去費)」で置くことです。数字が雑でも、方向性が合えば高掴みを避けやすくなります。
特に厨房機器は、部品供給や修理体制が切れていると一気に価値が落ちるので、見た目が綺麗でも安全側で評価するのが無難です。
譲渡対象・残置物・リース|証憑が出ないものは条件に反映する
造作譲渡で揉めやすいのは「誰のものを、何を、どの状態で引き継ぐのか」が曖昧なまま進むことです。
譲渡対象に入っているつもりの機器が実はリースで、後からリース会社から請求が来る。逆に、不要な残置物が譲渡対象に紛れ込み、撤去費を自分が負担する。こういう事故は、証憑が揃っていればかなり減らせます。
- 譲渡対象リストがあるか(機器、什器、配管、ダクト、看板などが列挙されているか)
- 各設備の所有権が分かる資料があるか(購入証明、領収、リース契約の有無)
- リース・割賦がある場合、残債と名義、解約や名義変更の条件が明確か
- 残置物の範囲が明確か(譲渡対象なのか、撤去して引き渡すのか)
- 瑕疵や故障の扱いがどうなるか(引渡し時点の状態、保証の有無)
ポイントは、証憑が出ない設備を「まあ大丈夫」で進めないことです。証憑が出ないなら、譲渡対象から外す、譲渡金を下げる、または条件(残債ゼロの確認、引渡し後の請求が出た場合の精算方法など)を契約に落とす。こうやってリスクを条件に変換すると、後から揉める確率が下がります。

見積の作り方|再利用・交換更新・追加工事・予備費に分ける
居抜きの見積もりが崩れる理由は、費用が一枚の見積書に混ざっていて、どこが変動しやすいのか見えなくなることです。
設備が残っている分、むしろ不確定要素が増える場面もあります。だから、見積もりは箱分けして「増えやすい部分」を先に見える化したほうが安全です。箱分けは、次の4箱+予備費が基本になります。
| 箱 | 中身 | 増えやすい原因 |
|---|---|---|
| 再利用整備 | 清掃、修理、点検、再塗装など | 分解して初めて傷みが分かる |
| 交換更新 | 厨房機器、給湯、空調、照明の入替 | 部品供給切れ、能力不足、故障発覚 |
| 追加工事 | 電気増設、給排水変更、ダクト改修、内装制限対応など | 建物側制約、許可要件、現地不一致 |
| 撤去処分 | 残置物撤去、解体、産廃、搬出 | 量の見誤り、搬出経路の制限 |
| 予備費 | 想定外の追加対応に備える枠 | 居抜きは開けてから出る論点が多い |
例えば、譲渡金を下げたいなら「交換更新と撤去処分の見込み」を根拠にしやすいですし、契約前に管理側へ確認すべき事項も「追加工事に入る論点」に寄せられます。予備費は、箱分けしても残る不確定要素のために必須で、ゼロで組むと一度の想定外で資金繰りが崩れやすくなります。
結局、お金の勝負は、増えやすい費用を先に囲い込めるかで決まります。
許可と契約で詰まらない|開業延期と原状回復トラブルを防ぐ

居抜きは設備が揃っている分、許可もスムーズに進みそうに見えますが、止まるときは一瞬です。
保健所や消防の要件に足りない点が見つかると、追加工事が発生して工期が延び、家賃だけが先に出ていきます。さらに契約面で弱いと、工事の承認が取れずに動けない、退去時に想定外の原状回復を求められる、といった別の詰まりも起きます。
許可と契約は、契約前に「詰まりの芽」を潰し、書面で固めるほど安全になります。
契約前の事前相談|保健所と消防で追加工事を先に確定する
結論から言うと、契約前に保健所と消防へ事前相談を入れるだけで、居抜きの失敗率は大きく下がります。なぜなら、開業延期の多くは「現況が要件に足りないのに、契約してから気づく」ことで起きるからです。内装が出来上がってから指摘されると、手直しが二度手間になり、費用も時間も増えます。
事前相談は、思いつきで行くより、持ち物と聞き方を揃えるほうが早いです。準備と確認の要点を表にまとめます。
| 相談先 | 持っていくと話が早いもの | 止まりやすい論点 |
|---|---|---|
| 保健所 | 平面図(厨房・客席の寸法入り)、現況写真、メニューの想定 | 手洗い・シンク数、区画、床壁天井の仕上げ、動線 |
| 消防 | 平面図、天井の仕様が分かる資料、厨房機器の熱源種別 | 内装制限、火気設備、必要な警報設備・誘導灯、消火器 |
相談時のコツは、完璧な図面を用意することより、現況と業態の前提を正しく伝えることです。例えば、油煙が強いメニューか、火気を使うか、客席と厨房の区切りをどうするかで要件が変わります。
また、指摘事項は口頭で終わらせず、メモを残して見積もりに落とし込みます。追加工事の候補が契約前に見えるだけでも、譲渡金交渉や契約条件の調整が現実的になります。
まとめ
飲食店の居抜き物件で失敗しないためには、判断の順番が重要です。
内見ではまず「排水・グリスト」「換気・ダクト経路」「電気容量・動力」の3点で足切りし、建物側の制約で業態が成立するか確認します。これらは契約後に直しにくく、発覚しても取り返しがつきません。
次にお金の面では、造作譲渡金を設備の定価ではなく「再利用価値+時間価値-交換費-撤去費」で判断し、見積もりは再利用・交換更新・追加工事・撤去・予備費に箱分けして管理します。
最後に許可と契約では、契約前に保健所と消防へ事前相談し、追加工事の有無を確定させることで開業延期を防げるでしょう。




