赤字店舗の売却は可能?買い手の見つけ方や売り方を会計士が解説!

店舗売却とは

赤字経営に陥った店舗を手放すべきか悩むオーナーは少なくありません。「赤字の店舗でも売却できるのか」「売却と廃業ではどちらが損を抑えられるのか」といった疑問は、多くの経営者が直面する現実的な課題です。

実は、赤字店舗であっても立地やブランド、設備の状態によっては買い手が見つかることがあります。むしろ、廃業してゼロにするよりも「店舗を売却して少しでも資金を回収する」方が合理的なケースも少なくありません。そこで本記事では、赤字店舗の売却が可能かどうか、その条件や準備すべきこと、売却と廃業の違いまで徹底的に解説します。

このページでわかること

  • 赤字店舗でも売却できる条件とその背景
  • 売却までの流れと必要な準備
  • 赤字店舗が売却された実例と価格設定のポイント
  • 売却と廃業の違いと、それぞれのメリット・デメリット
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目次

赤字でも店舗を売却できるのか?

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結論、赤字でも売却は可能です。買い手は「場所」「造作・設備」「ブランド・客層」「賃貸条件」といった資源に価値を見出します。

数字が赤字でも、移転コストを抑えたい開業希望者や多店舗展開企業にとっては魅力になる場合があります。

赤字店舗が売却される理由と背景

赤字でも売却先が現れるのは、買い手が「初期投資の圧縮」と「立ち上げ時間の短縮」を重視するためです。市場側の事情も重なり、一定の需要が生まれます。概要を整理します。

観点要点
買い手の狙い内装・設備をそのまま使い開始までの期間と費用を圧縮。人気立地を確保しやすい。
売り手の事情原状回復費の回避や敷金回収の前提づくり。撤退コストの最小化と資金回収。
市場背景人手不足や物価高で新装開店の負担が増大。居抜き・事業譲渡へのニーズが拡大。

ポイントは、買い手の意思決定軸(コスト・スピード・立地)に沿ってアピールを組み立てることです。赤字の理由が立地以外にあり、改善可能だと伝えられれば評価は上がります。

赤字でも買い手がつく条件とは

買い手が重視する条件は明確です。次の観点を満たすほど成約に近づきます。

  • 立地の優位性
    ↳駅動線・視認性・商圏人口などが魅力的
  • 設備の即戦力性
    ↳厨房・排気・電気容量が業態転換に対応しやすい
  • 賃貸条件の受け入れやすさ
    ↳家賃水準・保証金・契約期間が妥当
  • 情報の透明性
    ↳設備リスト・修繕履歴・赤字要因の説明がクリア
  • 家主の承諾見込み
    ↳譲渡・転貸の可否や承諾手続きが進めやすい
  • 引継ぎのしやすさ
    ↳マニュアル・レシピ・仕入れ先など運営情報の共有

これらを事前に整備し、数値と写真で裏づけると、買い手の不安が減り交渉が前に進みます。

事業譲渡と資産売却の違い

売却スキームの選択は、スピード・リスク・税務に影響します。両者の違いを把握し、自店に合う方法を選びましょう。

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項目事業譲渡資産売却(造作・設備等)
譲渡対象事業の一体(契約・在庫・従業員・ノウハウ等を選別して移転)内装・設備・什器など個別資産の売買
債務・契約の扱い個別に同意取得し選別承継原則として債務は引き継がない
スピード調整が多く時間を要しやすい比較的早い(範囲が明確)
家主承諾賃貸借の承継や新規契約で合意が必要造作譲渡+新規賃貸借の承諾が鍵
税務譲渡益課税・消費税の扱いは内容により変動資産ごとに消費税・譲渡益課税を整理

早さを優先するなら資産売却、事業の連続性や顧客・従業員の維持を重視するなら事業譲渡が向きます。どちらを選ぶ場合でも、家主の承諾手続きと引継ぎ範囲の書面化を先に進めると、交渉が滑らかになります。

店舗売却までの流れと必要な準備

美容院

赤字店舗の売却は「思い立ったらすぐ売れる」というものではありません。資産や負債の整理、必要書類の準備、仲介業者の選定など、いくつかの段階を踏む必要があります。

まずやるべき資産・負債の整理

最初のステップは、自店舗の財務状況を明確にすることです。売却価格を決める際も、買い手に安心してもらうためにも、資産と負債を整理しておく必要があります。

  • 資産:内装・什器・厨房機器・ブランド価値・顧客リスト
  • 負債:借入金・リース契約・未払い家賃・未払い取引先債務
  • その他:保証金の扱い、未消化のポイントやチケット

この作業を怠ると、交渉中に想定外の債務が発覚して破談になることもあります。

売却に必要な書類と準備リスト

売却交渉を円滑に進めるためには、事前に必要な書類を整えておくことが大切です。主なものを以下にまとめます。

書類内容
賃貸借契約書家賃・契約条件・原状回復義務の確認
財務資料直近の決算書・試算表・借入金残高証明書
設備・什器リスト購入時期・使用年数・メンテナンス履歴
スタッフ契約関係雇用契約書・シフト管理表(引継ぎがある場合)

これらを揃えることで、買い手からの信頼度が高まり、価格交渉を有利に進められます。

M&A仲介業者の活用と選び方

店舗売却をスムーズに進めるには、専門知識を持った仲介業者のサポートが有効です。ただし、業者によって得意分野や報酬体系が異なるため、選び方が重要になります。

  • 得意分野を確認
    ↳飲食店や小売業の事業譲渡実績が豊富かどうか
  • 報酬体系を比較
    ↳着手金の有無、成功報酬の割合、最低報酬額
  • 情報網の広さ
    ↳マッチングプラットフォームを活用しているか
  • 相談対応の姿勢
    ↳売主の事情に寄り添い、誠実に対応してくれるか

複数社に相談・見積もりを依頼し、比較検討することで、安心して任せられる仲介業者を選べます。

赤字でも売却できる店舗の特徴と事例

飲食店

「赤字だから売れない」と思われがちですが、実際には買い手が見つかる店舗には共通点があります。

立地やブランド価値の活かし方

店舗の収益が赤字であっても、立地やブランド価値には依然として魅力があります。特に飲食店や美容室のように設備投資が大きい業種では、立地や内装をそのまま引き継ぎたい買い手が少なくありません。

  • 立地の強み
    ↳駅前や商業施設内など、人通りが多い場所は依然として需要がある
  • ブランド価値
    ↳一定の知名度や常連客がいる店舗は「再建の余地あり」と見られやすい
  • 設備や造作
    ↳高額な厨房設備や特殊な内装は買い手にとって魅力的

売却時には「なぜ赤字なのか」だけでなく、「買い手にとっての価値」を明確に示すことが重要です。

実際に赤字で売却された事例

赤字店舗の売却事例を分析すると、買い手が注目するポイントが見えてきます。以下は代表的なケースです。

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業種状況売却結果
ラーメン店赤字続きだが駅前立地と厨房設備が充実造作譲渡として300万円で売却成立
美容室人材不足で売上減少、ただし常連客多数事業譲渡で同業者に引き継がれ、顧客も維持
カフェ家賃負担が大きく赤字、内装は新しくおしゃれ新規開業希望者が即決で契約、改装費用を節約できた

これらの事例に共通するのは「買い手にとって価値がある要素が明確だった」という点です。

価格設定と交渉のコツ

赤字店舗の売却では、価格設定が交渉の成否を左右します。高すぎると買い手がつかず、安すぎると資金回収ができません。バランスをとることが重要です。

  • 根拠を持った価格設定
    ↳設備の残存価値や同業種の相場を参考に提示
  • 柔軟な交渉姿勢
    ↳分割払い・リース引継ぎなど条件面で調整余地を示す
  • 赤字要因の開示
    ↳誠実に説明することで買い手の不安を軽減
  • 第三者の査定活用
    ↳専門業者の評価をもとに交渉を進めると信頼性が高まる

交渉では「赤字を補う魅力は何か」を言語化し、買い手に納得感を与えることが成約への近道です。

まとめ|赤字店舗の売却は「前向きな撤退」

赤字店舗だからといって、必ずしも廃業しか道がないわけではありません。

立地や設備、ブランド価値などに魅力があれば、買い手が見つかり売却につながるケースは多く存在します。本記事では、赤字でも売却できる理由と条件、売却までの流れや必要な準備、実際の事例や交渉の工夫、さらに廃業との比較を解説しました。

重要なのは「損を最小限に抑える視点」です。資産と負債を整理し、必要書類を揃え、仲介業者や専門家と連携すれば、売却を有利に進められます。価格設定や交渉でも誠実さと根拠を示すことで、買い手の不安を取り除けます。

この記事を書いた人

出水祐介のアバター 出水祐介 公認会計士/税理士

公認会計士/税理士。ファーストキャリアをデロイトトーマツでスタートし、日本を代表する大手上場企業の監査に携わる。その後、ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)、コンサルティング会社でM&A事業責任者を経て、会計事務所を設立。現在は、個人事業主やベンチャー企業、中小法人など、幅広いクライアントに対して、会計税務やM&Aの専門的なアドバイスを提供しています。

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