居抜きとスケルトンの違いとは?費用・工期で後悔しないために

スケルトン状態 居抜きとの違い

店舗を開業しようと物件を探していると、「居抜き」や「スケルトン」といった言葉に出会います。

どちらが自分に合っているのか分からず、仲介業者の説明だけで判断してしまいそうになることもあるでしょう。しかし、表面上の言葉に惑わされてしまうと、想定外の費用や工期のズレに悩まされる可能性があります。

そこで本記事では、単なる用語の説明ではなく、実際に物件を内見し、見積もりを取り、契約を交わす際に「何を見て、どう判断すればよいか?」に重点を置いて解説していきます。

このページでわかること

  • 居抜きとスケルトンの定義と、現況から判断すべき理由
  • 費用や工期の違いを、解体・内装・設備ごとの内訳で比較する方法
  • 居抜き物件に潜むリスクと、内見時にチェックすべき設備ポイント
  • 契約で押さえるべき原状回復や残置物の責任分界の考え方
  • 判断に迷ったときの「2案見積もり」と「出口から逆算する視点」
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目次

居抜きとスケルトンの違いとは?

居抜きとスケルトンは、用語を暗記するよりも「現場に何が残っているか」「どこまで撤去されて引き渡されるか」を見て判断できるようになるのが近道です。

募集図面や説明の言い回しと、実際の状態が一致しないこともありますし、同じ居抜きでも残る設備の内容や劣化具合で、費用・工期・トラブルの起き方が大きく変わります。

居抜きとは何が残る状態か|判断は現況がすべて

結論として、居抜きは「前の店が使っていた内装や設備が、ある程度残ったまま引き渡される状態」を指すことが多いです。

ただし、残る範囲は物件ごとにばらつきがあり、同じ“居抜き”でも中身は別物になり得ます。だから判断は現況がすべてです。内見時点で、残っているものを設備単位で棚卸ししていくと、見積もりの土台が固まります。

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残りやすい要素見落としやすいポイント
内装・造作(床、壁、天井、カウンター等)業態変更で作り替えになり、結局撤去費が出る
空調・換気・ダクト匂い・油汚れ・ルート制約で追加工事が出る
電気(分電盤、配線、契約容量の余力)容量不足だと幹線工事や申請で費用・日数が伸びる
給排水(口径、立ち上がり位置、グリスト等)口径不足や位置ズレで配管延長が増える
厨房機器・什器(冷蔵、加熱、シンク等)年式や状態次第で修理・更新が連鎖しやすい

居抜きで失敗しやすいのは「残っている=すぐ使える」と決め打ちして資金計画を組むことです。根拠が取れない設備は、壊れたら終わりの前提で見ておくほうが安全です。

また、造作譲渡が絡む場合は、譲渡額だけでなく、修理・撤去・処分の負担も込みで総額を見ないと割高になりやすいです。居抜きの良さは“残る価値”を積み上げるより、“撤去しなくて済む金額”で測ると判断が速くなります。

スケルトンとはどこまで戻した状態か|自由度と工事量の目安

スケルトンは、一般に「内装や設備を撤去し、構造躯体に近い状態で引き渡す」意味で使われます。

居抜きより自由度が高く、レイアウトや動線、設備計画をゼロから組みやすい一方で、工事量が増えやすく、費用と日数が読み違えるとダメージが大きくなります。なお、スケルトンと書かれていても電気盤や配管の一部が残ることはあり得るので、最終的には引渡し範囲を文書で固めることが大切です。

  • 電気容量の増設が必要になる(業種の機器に対して契約容量が足りない)
  • 給排水の新設・延長が増える(厨房やトイレ位置の変更で配管距離が伸びる)
  • 排気経路の新設が難航する(建物ルールやルート確保で工事範囲が広がる)
  • 空調の新設・増設が必要になる(室外機置場や配管ルートに制約がある)

スケルトンは、自由に作れるぶん、決めることが多くなりやすい選択です。

だから先に「業態に必須の条件(電気・給排水・排気・動線)」を決め、その条件に対して現地が足りるかを確認してからプランを固めると、後からの大工事を減らしやすくなります。

費用・工期・契約リスクで後悔しないために

居抜きかスケルトンかを決めるとき、迷いの正体はだいたい同じです。初期費用がどこまで増えるのか、開業まで何日かかるのか、そして契約上の責任がどこからどこまでなのか。

これらは、物件のラベルではなく「総コスト」と「責任分界」で見ないと判断を誤りやすくなります。特に居抜きは、残る設備を使える前提で組むと追加費用が出やすいので、最初から比較の枠組みを作っておくのが安全です。

初期費用の比較|解体費・内装費・設備更新費・造作譲渡費

結論として、居抜きは初期費用を抑えやすい可能性がありますが、条件付きです。

抑えられるのは「作らなくて済む」より「撤去しなくて済む」が成立したときで、設備の更新が多いとスケルトンより高くなることもあります。だから費用は、項目ごとに分けて同じ土俵で比べるのが基本です。

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費用項目居抜きで起きやすいことスケルトンで起きやすいこと
解体・撤去費残す判断ができれば圧縮しやすいが、結局撤去が増えると跳ねる入居後に内装撤去は少ないが、入居前の引渡し範囲次第で変動
内装工事費造作を流用できると下がるが、業態変更で作り替えになると増えるゼロから作るので増えやすいが、設計が整理されると読みやすい
設備更新・修理費年式・容量不足・故障で追加になりやすい新設前提で計画しやすいが、インフラが足りないと増える
残置物の処分費誰の責任か曖昧だと自分負担になりやすい基本は少ないが、引渡しに残るものがあると同様に発生
造作譲渡費譲渡額が高いと、撤去費回避より損になることがある基本は発生しない

居抜きで得をするかは、残す価値を足し算するより、撤去しないで済む金額で測るとブレにくいです。造作譲渡がある場合も、譲渡額が撤去費回避より大きいなら、気持ちよく見送れる判断になります。

工期の比較|開業までの期間と家賃発生日のズレに注意

工期は、工事そのものの日数だけでなく、家賃がいつから発生するかを含めて見ないと意味が変わります。例えば居抜きで工期が短くても、引渡しが遅い、着工許可が出ない、設備の修理待ちが発生する、といった事情で実質の開業時期がずれることがあります。

逆にスケルトンは工事が長くなりがちですが、条件が整理されていればスケジュールは読みやすくなります。

  1. 引渡し日(鍵の受領日)と、現地での着工可能日を分けて確認する
  2. 家賃発生日がいつかを確認し、工事期間と重なる日数を把握する
  3. 設備の手配・交換が必要な場合は、納期を含めて工程に入れる
  4. 検査・届出(保健所、消防など)が必要なら、その日程も逆算する

とくに居抜きは、既存設備の修理や追加工事が出ると、短工期の前提が崩れやすいです。工期の短さに期待する場合ほど、設備の状態確認と、着工・引渡し条件の確認が効いてきます。

居抜きの落とし穴|設備の故障・容量不足・匂い排気の追加工事

居抜きのリスクは、設備が「残っていること」ではなく、「残っているものの状態が読めないこと」にあります。使えると思っていた設備が動かない、必要容量が足りない、匂いや油が抜けずに改修が必要になる。この3つが、追加費用と時間の原因になりやすい定番です。

落とし穴起きやすい症状
設備の故障・寿命空調が効かない、冷機が冷えない、給湯が不安定
電気容量の不足機器を入れるとブレーカーが落ちる、増設が必要
匂い・油・排気の問題臭気が残る、油汚れが付着、排気が近隣トラブルになる

対策はシンプルで、使える根拠が取れない設備は、最初から更新枠に入れて資金計画を組むことです。使えたらラッキー、くらいの目線にすると資金計画が崩れにくくなります。

内見チェック|電気容量・給排水・排気経路と残る設備の棚卸し

内見でやるべきことは、格好よく見せることではなく、後からお金が出る論点を潰すことです。現況を見て判断するには、その場で取れる情報を取り切るのが重要になります。最低限、設備の棚卸しと、インフラが業態に合うかの確認は外せません。

  • 残る設備の棚卸し(機器名、台数、型番、年式、状態)
  • 電気容量(分電盤、主幹、契約容量、増設余地)
  • 給排水(立ち上がり位置、口径、排水経路、グリストの有無)
  • 排気(ダクト経路、屋外への出口位置、近隣との距離感)
  • ガス(引込みの有無、号数、増設の可否)

このチェックは、メモだけだと後で判断がぶれます。写真で残す、型番を控える、可能なら業者同伴で見て「工事になるポイント」を口頭で聞く。この3点を押さえると、見積もりが現実に寄っていきます。

契約チェック|残置物の責任分界と原状回復範囲を文書化する

トラブルが起きやすいのは、工事そのものより「誰が何を負担するか」が曖昧なまま契約してしまうところです。居抜きは特に、残置物や造作譲渡が絡むため、責任分界が曖昧だと退去時まで尾を引きます。だから契約は、感覚ではなく文書で固めるのが基本です。

【確認すべき論点】

  1. 残置物の扱い:撤去するもの、残すもの、故障時の修理・交換負担が誰か
  2. 造作譲渡の扱い:対象物の範囲、代金、引渡し条件、瑕疵が出たときの扱い
  3. 原状回復の範囲:退去時にどこまで戻すのか、スケルトン戻しの要否

そして、入居時点で退去時の戻し方を決めておくと、総コストが読みやすくなります。

原状回復は後から揉めやすいので、契約書だけで曖昧なら、設備一覧や引渡し状態の資料を添付し、覚書で責任を固定しておくのが現実的です。言った言わないを避けられるだけで、余計な出費のリスクがぐっと下がります。

まとめ|現況と総コストで居抜きかスケルトンかを決める

居抜きとスケルトンの違いは、言葉の定義よりも「残るもの」と「契約条件」で決まります。居抜きは、うまくハマれば初期費用と工期を抑えやすい一方で、設備の年式や状態、容量不足、匂い・排気の問題が隠れていると追加費用が出やすくなります。

スケルトンは、自由度が高く計画を整理しやすい反面、ゼロから作る分だけ工事量が増え、予算と期間が伸びやすい傾向があります。どちらが得かは、ラベルではなく現況の中身を棚卸しして初めて見えてきます。

判断の軸は「総コスト」です。居抜きで安く見えても、撤去が増えたり設備更新が連鎖したりすると、結果的にスケルトン並み、場合によってはそれ以上になります。

そのため、見積もりは、居抜きを生かす案だけでなく、撤去して作り直す案も同じ土俵で出し、差分で比べるのが安全です。造作譲渡がある場合も、譲渡額を単独で見るのではなく、撤去しないで済む金額と並べて判断すると、実態に合った選択になります。

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この記事を書いた人

出水祐介のアバター 出水祐介 公認会計士/税理士

公認会計士/税理士。ファーストキャリアをデロイトトーマツでスタートし、日本を代表する大手上場企業の監査に携わる。その後、ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)、コンサルティング会社でM&A事業責任者を経て、会計事務所を設立。現在は、個人事業主やベンチャー企業、中小法人など、幅広いクライアントに対して、会計税務やM&Aの専門的なアドバイスを提供しています。

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