飲食店の回転率はどれくらい?平均値を業種別にわかりやすく解説!

飲食店の回転率

客席は満席なのに売上が伸び悩む――そんなジレンマを抱える飲食店は少なくありません。実は「何人入ったか」より「どれだけスムーズに入れ替わったか」が売上を左右します。

本記事では、現状データの取り方からボトルネック分析、即効性のある低コスト施策、中長期で効く店舗設計とIT導入、さらには顧客体験を保ちながら自然に席を空けてもらう工夫まで、段階的に整理しました。

このページでわかること

  • 回転率の定義と業態別の平均値
  • 入店〜退店の工程を数値で洗い出す分析フロー
  • QR注文・セルフレジなど低コストで即効性のある改善策
  • フロア設計とITツール導入による中長期最適化
目次

飲食店の回転率とは?基礎知識と計算方法

飲食店

満席にもかかわらず利益が伸び悩む場合は、まず回転率を確認なさることをおすすめいたします。回転率を把握することで、席数や客単価を変えずに売上を押し上げる余地が見えてまいります。

回転率の定義と業態別平均値

回転率は「一定期間に客席が何回入れ替わったか」を表す指標です。業態によって適正値が異なりますので、まず相場をご確認ください。

業態1日の回転数目安滞在の特徴
牛丼店・立ち食いそば など10〜20回以上短時間滞在・低価格帯
カフェ2〜8回長居が起こりやすい
レストラン・居酒屋2〜3回中程度の滞在時間
高級フルコース レストラン1回長時間滞在・高価格帯

表と自店の数値を比較して差が大きい業態から手を付けると、効果を実感しやすくなります。

回転率を上げると何が変わるのか

指標を改善すると、次のような効果が期待できます。

  • 売上を客数ベースで伸ばしやすくなります
    ↳席を増やす投資が不要です
  • 待ち行列が短くなり、機会損失を抑えられます
    ↳外待ちで離脱していたお客さまを取り込みやすくなります
  • オペレーションの無駄が減り、スタッフ負荷が均等になります
    ↳入店から会計までの流れが整理されます

滞在時間だけを短縮するのではなく、動線やメニュー構成を整えて体感ストレスを抑えることが、リピーター維持の鍵となります。

回転率の計算式と必要データ

改善幅を測定するには、計算式と入力する数字をそろえることが欠かせません。下表に必要な項目をまとめました。

項目内容入手例
席数稼働できる席のみをカウントフロア図面
期間内の売上時間帯・日別など任意POS集計
客単価売上 ÷ 客数で算出POS/予約台帳
客数人数カウントまたは売上から逆算POS/手動カウント

計算式は「着席客数 ÷ 席数」、または「(売上 ÷ 客単価) ÷ 席数」です。はじめは月次で把握し、慣れてきたら時間帯別まで粒度を細かくするとボトルネックが見えやすくなります。

飲食店の回転率のボトルネックの見つけ方

飲食店

回転率を高める最短ルートは、まず現状を数字で把握することです。入店から退店までを可視化すると、時間を費やしている工程が浮かび上がり、どこから手を付けるべきかが明確になります。

時間帯別データ収集シート作成

工程ごとの時間を比較しやすいよう、1日を細かく区切って記録するシートを作成いたします。管理しやすい列見本を下表にまとめました。

時刻帯客数平均滞在分平均客単価合計売上
10:00-11:00
11:00-12:00
21:00-22:00

シートはExcelやGoogleスプレッドシートで作成し、POSから出力したCSVを貼り付けると集計が容易です。1週間続ければ、曜日による傾向も読み取れます。

工程ごとの滞在時間計測方法

どの工程で時間を要しているかを測る際は、次の手順で進めてください。

  1. 観測対象のテーブルを3〜5卓選定し、ピーク帯とアイドル帯の両方で調査
  2. 入店、注文、配膳、食後、会計、退店のタイミングをストップウォッチで記録
  3. 2回計測したら平均を取り、工程ごとの所要時間を算出
  4. 合計滞在時間と全工程の合計が一致するか確認し、記録を完了

スタッフの手が離せない場合は、スマートフォンの動画を定点設置し、あとで再生速度を落として時間を測定すると正確です。

20%ルールで改善優先度を決める

得られた数字をもとに、限られたリソースで最大の効果を得るための優先度を設定いたします。

  • 合計滞在時間の上位20%に該当する工程を洗い出す
    ↳たとえば配膳と会計の二つで全体の40%を占める場合は、この二工程を優先
  • 上位工程に対し「省略できる手順」「分業できる動線」「ツールで短縮できる作業」を洗い出す
    ↳例:セルフレジの設置、配膳ロボットの試験導入
  • 効果が見込める順に改善を実施し、翌週のデータで確認

時間帯別シートと合わせて分析することで、「ピーク時に限り会計が滞る」といった状況を把握しやすくなり、投資判断の精度が高まります。

まとめ|今日から始める回転率アップ戦略

本記事では、回転率の定義と業態別の目安、ボトルネックを洗い出すためのデータ収集と測定手法、即効性のある低コスト施策から中長期で効果を発揮するレイアウト・IT導入、さらに顧客体験を損なわずに自然な退店を促すアプローチまで、順を追ってご説明いたしました。

実践に移す際は、まず〈時間帯別データ収集シート〉を1週間運用し、滞在時間上位20%の工程を抽出してください。次に、卓上QR注文やセルフレジなど初期投資の小さい施策を試し、1〜2週間かけて効果を測定します。

改善幅が小さい場合は、フロアレイアウト変更やAI予約システムの導入など中長期策を検証し、ROIを比較しながら段階的に進めていただくと失敗が少なくなります。

この記事を書いた人

出水祐介のアバター 出水祐介 公認会計士/税理士

公認会計士/税理士。ファーストキャリアをデロイトトーマツでスタートし、日本を代表する大手上場企業の監査に携わる。その後、ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)、コンサルティング会社でM&A事業責任者を経て、会計事務所を設立。現在は、個人事業主やベンチャー企業、中小法人など、幅広いクライアントに対して、会計税務やM&Aの専門的なアドバイスを提供しています。

目次