「飲食店の利益率って何%が普通?」と調べても、出てくる数字がバラバラで余計に迷うことがあります。理由はシンプルで、利益率には種類があり、さらに業態や立地、回転率、人手のかかり方で“普通”が変わるからです。
加えて、利益が出ているように見えても現金が減る店もあり、数字の見方を間違えると判断が外れます。
この記事では、粗利率・営業利益率・最終利益率の違いを整理し、原価率・人件費率・FL比率・家賃比率といった最低限の指標で、自店が健全かどうかを判定できるようにします。
このページでわかること
- 粗利率・営業利益率・最終利益率の違いと、混同しないための計算の考え方
- 原価率・人件費率・FL比率・家賃比率など、最初に見るべき指標と目の付け所
- 居酒屋・カフェ・ラーメン・焼肉・テイクアウトなど、業態別の利益率目安レンジ
- 目安から外れたときに、原価・人件費・固定費のどこが原因かを切り分ける手順
- 損益分岐点から逆算して、自店の目標利益率を現実的に決める方法
飲食店の利益率はどれを指すかを整理する

「利益率が低い」と感じたとき、まず確認したいのは“どの利益”の話をしているかです。飲食店では、粗利が出ていても人件費や家賃で消えることがありますし、営業利益が出ていても返済や税金、設備更新で現金が減ることもあります。
粗利率・営業利益率・最終利益率の違いと計算の考え方
結論として、飲食店の「利益率」は1つではありません。粗利率は仕入れの影響を強く受け、営業利益率は人件費と固定費まで含めた“店の稼ぐ力”に近く、最終利益率は税金や利息なども含んだ着地です。
何を目標にするか、どこを直すべきかは、どの利益率を見ているかで変わります。
| 指標 | ざっくり意味 | 計算の考え方 |
|---|---|---|
| 粗利率 | 売上から原価を引いた残りの割合 | (売上−原価)÷売上 |
| 営業利益率 | 本業で残る利益の割合 | 営業利益÷売上 |
| 最終利益率 | 税金や利息なども含めた最終的な着地 | 最終利益÷売上 |
ここで押さえたいのは、改善の順番です。現場の打ち手に直結しやすいのは、まず粗利率と営業利益率です。最終利益率は大事ですが、税金や返済の影響も乗るため、現場オペの改善だけでは動きにくいことがあります。
だから最初は、粗利で原価の穴がないか、営業利益で人件費と固定費に耐えられているか、という順で見たほうが迷いにくいです。

まず見るべき指標|原価率・人件費率・FL比率・家賃比率
利益率の目安を調べる前に、構造を決めている指標を先に出すほうが早いです。特に重要なのは、原価率・人件費率・FL比率(原価+人件費)・家賃比率です。
この4つを見ると、赤字の芽がどこにあるかが掴みやすくなります。全部の科目を追えない場合でも、この4つは外さないのがコツです。
- 原価率(原価÷売上)
↳高いときは、仕入れ単価だけでなく、ポーションのブレ、歩留まり、廃棄、値付けの弱さを疑う - 人件費率(人件費÷売上)
↳高いときは、シフトの山が売上の山と合っていない、教育不足で作業が遅い、役割分担が曖昧を疑う - FL比率(原価+人件費)÷売上
↳高いときは、原価と人件費が同時に漏れている。売上を伸ばすより先に“漏れ”を潰すほうが効きやすい - 家賃比率(家賃÷売上)
↳高いときは、席数と回転率に対して売上設計が足りない可能性がある。客単価と回転率の設計を疑う
もう一つ、見落とされがちなのが「忙しさ」と数字のズレです。忙しいのに利益率が低い店は、売上が弱いのではなく、人件費が売上に連動して増えすぎている、あるいは回転率が詰まって売上の上限が低い、というケースがよくあります。

【業種別】飲食店の利益率の目安レンジ

利益率の「平均」だけを見ても、自店の健全性は判断しにくいです。飲食は業態によって原価の出方も、人手のかかり方も、回転のさせ方も違うため、目安はレンジで捉えるのが現実的です。
業態別の目安|居酒屋・カフェ・ラーメン・焼肉・テイクアウト
業態別の目安は「利益率そのもの」よりも、原価率と人件費率の組み合わせで理解するとズレにくいです。焼肉は食材原価が高くなりやすく、居酒屋は人手が要りやすい。ラーメンは回転率で稼ぎやすい一方、ピーク設計が崩れると人件費が跳ねやすい。テイクアウトは人件費を抑えやすい反面、手数料や容器代など別の固定費が効いてきます。
つまり、レンジが違うのは理屈があります。
| 業態 | 原価率の目安 | 人件費率の目安 | FL比率の目安 | 営業利益率の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 居酒屋 | 30〜38% | 25〜35% | 55〜70% | 5〜12% |
| カフェ | 25〜35% | 20〜30% | 50〜65% | 3〜10% |
| ラーメン | 28〜35% | 18〜28% | 48〜60% | 8〜15% |
| 焼肉 | 38〜45% | 18〜28% | 58〜70% | 3〜10% |
| テイクアウト | 25〜40% | 15〜25% | 45〜60% | 5〜15% |
この表の使い方は、自店を“どれに近い構造か”で見比べることです。例えば、居酒屋で人件費率が35%を超えるなら、料理の提供と接客の流れに詰まりがある可能性が高いです。
焼肉で原価率が45%を超えるなら、ロスや値付け、盛り付け量のブレが疑わしい。レンジに収まることがゴールではなく、レンジから外れた理由を説明できる状態が目標です。
利益率が低い原因|原価・人件費・固定費のどこが重いか
利益率が低いときに、原因を一発で決めるのは危険です。原価・人件費・固定費のどれかが重い場合もあれば、複数が同時に漏れている場合もあります。
そのため切り分けは、順番を決めて機械的に進めるほうが失敗しにくいです。最初に見るのは、FL比率と家賃比率です。ここで構造の良し悪しに当たりを付けられます。
- FL比率(原価+人件費)が高いか低いかを見る
- 家賃比率が高いか低いかを見る
- FLが高いなら、原価率と人件費率のどちらが主因か分ける
- 家賃比率が高いなら、客単価か回転率が設計不足かを疑う
- 最後に“固定費の積み上げ”(光熱・リース・手数料・広告)を棚卸しする
よくあるパターンを文章で整理すると、判断が速くなります。売上はあるのに利益が薄い場合、原価が高い(値付けが弱い、廃棄が多い、ポーションがブレる)か、人件費が売上に連動して増えすぎている(ピーク設計が甘い、教育不足で遅い、役割が曖昧)ことが多いです。
逆に、FLは悪くないのに利益が残らない場合は、家賃や手数料、リース、広告などの固定費が重い、または返済負担が効いている可能性があります。
ここで大事なのは、値上げを最初の選択肢にしないことです。もちろん必要なケースはありますが、利益率が低い原因は、ロスやシフト、回転の詰まりなど“漏れ”で起きていることも多いです。
改善の優先順位|短期で効く施策と中期で効く施策
改善は、短期で効くものと、中期で効くものを分けないと混乱します。
短期は、現場の運用で“漏れ”を潰して利益を作る領域です。中期は、価格とメニュー構成、回転率、リピート設計など、店の稼ぎ方そのものを整える領域です。どちらも必要ですが、同時に全部やると現場が崩れやすいので、まず短期で資金を守り、次に中期で伸ばすのが安全です。
| 時間軸 | 狙い | 具体策 |
|---|---|---|
| 短期(〜30日) | 漏れを止めて利益を確保する | 廃棄削減 ポーション標準化 トップ10商品に絞る 追加注文導線 シフトの山合わせ |
| 中期(1〜3か月) | 稼ぎ方を整えて安定させる | 価格とメニュー構成の再設計 提供時間の短縮 席運用と予約枠 リピート導線 |
短期施策で重要なのは、全部を管理しようとしないことです。まずはトップ10メニューだけで原価と導線を整える、ピーク帯だけ役割を固定する、というふうに対象を絞ると回りやすいです。
まとめ|目安は逆算して自店の目標値に落とす
利益率の目安は、平均値を覚えるためのものではなく、自店の目標を決めるための材料です。同じ業態でも、回転率、人手のかかり方、立地、営業時間で数字は変わります。
だから「目安レンジに入っているか」だけで一喜一憂せず、原価率・人件費率・FL比率・家賃比率といった構造指標を出し、どこがズレているかを説明できる状態を作ることが先です。ここができると、値上げのような怖い判断も、根拠を持って進めやすくなります。
目標利益率を置くときは、利益率から考えるより、損益分岐点売上を先に置いたほうが現実的です。固定費と必要な粗利から「最低限この売上がないと赤字になる」というラインを出し、そのうえで余裕のある利益を残すには何%が必要かを逆算します。
平均的な利益率でも、損益分岐点が高すぎる店は、天候や繁閑の揺れに弱くなります。だから目標は、利益率の数字だけではなく、安定して越えられる損益分岐点を作る発想で決めるとブレにくいです。




