「忙しいのに利益が残らない」「値上げしたいけど客離れが怖い」「人が集まらず現場が回らない」。飲食店が厳しいと言われる背景には、気合やセンスでは片づけられない構造があります。
原材料費・光熱費・人件費の上昇が同時に起き、さらに集客導線の変化で売上が読みづらくなり、競合も増える。そのうえ現金が先に尽きる資金繰りの問題まで重なると、体感として一気に苦しくなります。
ただ、厳しさは分解できます。売上側(客数・客単価・回転率・リピート・導線)と、コスト側(原価・人件費・光熱費・家賃・手数料・ロス)に分け、どこがボトルネックかを数字と現場オペで特定できれば、打ち手は選べます。全部を一度に変える必要はありません。
このページでわかること
- 飲食店が厳しいと言われる理由
- コスト増・売上不安定・競争激化・資金繰りに分解して理解する
- 経営健康状態のためのチェックリスト
- FL比率・家賃比率・人時売上など、厳しさの原因を特定するための最低限の指標
- 30日で効かせやすい改善の優先順位
飲食店の倒産は過去最高値を更新中

飲食店が「厳しい」と言われる背景には、体感ではなく数字で確認できる変化があります。
帝国データバンクの集計では、2025年の飲食店の倒産は900件となり、前年の894件を上回って過去最多を更新しました(負債1000万円以上・法的整理、集計期間は2000年以降)。3年連続で増えている点も重く、単発の出来事というより、構造的な圧力が続いていることが読み取れます。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 倒産件数 | 2025年は900件で過去最多 |
| 規模感 | 負債5000万円未満が696件(77.3%) |
| 業態の偏り | 酒場・ビヤホール204件 中華・東洋料理店179件 日本料理店97件(過去最多) |
増加の要因は、売上側とコスト側の両面にまたがります。コスト側では、食材費や光熱費の高騰、賃上げによる人件費負担が同時に重なりやすいのが特徴です。売上側では、団体客の減少や節約志向の強まりなど、客の行動変化が利益を押し下げます。
さらに同業との競争が激しいなかで、簡単に値上げへ踏み切れない店が多い点も効いています。実際に、飲食店の価格転嫁率が全体平均を下回るというデータもあり、コスト増を売価へ移しきれない状況が続きやすいです。
自社の経営は大丈夫?チェックポイント
- FL比率(原価+人件費)が上がっていないかを週次で確認する
- 家賃や手数料、リースなどの固定費が売上のブレを吸収できる水準かを見る
- 回転率の詰まり(提供遅れ、席運用、会計導線)が売上の天井になっていないかを洗い出す
- 値上げが難しい場合は、セット化や追加注文の導線など構成の見直しで実質単価を上げる
倒産件数が増える局面では、売上を追うだけでは追いつかないことがあります。
ロスやポーションのブレ、ピークのシフトのズレ、席運用の詰まりといった「漏れ」を先に止め、固定費と資金繰りの安全域を確保できるかが分かれ目です。
飲食店が厳しいと言われる4つの理由
飲食店が厳しく感じるとき、原因は一つではありません。
売上が落ちたのか、コストが上がったのか、回転が詰まっているのか、資金繰りが先に苦しくなっているのか。これらが同時に起きると、忙しさのわりに利益が残らず、将来の不安が強くなります。
コスト増|原材料費・光熱費・人件費が同時に上がる
厳しさの中心は、複数のコストが同時に上がることです。原材料費だけが上がるならメニュー構成で逃げ道がありますが、光熱費が上がり、人件費も上がると、逃げ道が狭くなります。
しかも飲食店は、売上が増えると原価と人件費が一緒に増えやすい構造なので、売上を伸ばしても利益が増えない状態になりやすいです。
コスト増が利益を削るポイントを、売上に対する比率で整理すると分かりやすいです。
| 費目 | 何が起きるか | 現場で起きやすい兆候 |
|---|---|---|
| 原材料費(原価) | 仕入れ単価が上がる | 売れているのに粗利が増えない |
| 光熱費 | 電気・ガスの負担が増える | 売上が普通でも利益が残らない |
| 人件費 | 時給が上がる、人が採れない | ピークが回らず、提供遅れや機会損失が増える |
| 手数料 | 予約・デリバリー等のコストが増える | 売上は増えたのに現金感がない |
ここで大事なのは、節約だけで乗り切ろうとすると、体験の質が落ちて売上側まで悪化しやすい点です。コスト増の時代は、ロス削減や作業の標準化など“漏れ”を止めつつ、単価や構成も含めて見直すほうが現実的になります。
売上の不安定化|客数の波と集客導線の変化で読みにくい
売上側の厳しさは「客数の波」と「集客導線の変化」が読みにくさを増やすことです。以前よりも、曜日や天候、イベント、周辺の選択肢で客数がブレやすく、同じ努力でも結果が安定しにくくなります。
加えて、集客は店前や口コミだけではなく、オンラインで見つけられるか、評価がどう見えるか、予約のしやすさがどうか、といった導線で差がつきます。
売上が不安定な店は、能力の問題ではなく、導線のボトルネックを放置していることがあります。例えば、検索で情報が出ない、写真が弱い、メニューが分からない、予約の流れが面倒、悪い口コミの原因が放置されている。これらがあると、ピーク以外の谷が埋まらず、売上が読みづらくなります。売上の波が大きいほど、固定費の重さが増すので、結果的に厳しさが増します。
競争激化|選択肢が多く、差別化しないと選ばれにくい
競争が激しくなると、同じ価格帯・同じジャンルの店が近くにあるだけで、店は比較されます。客にとっては選択肢が多いほど便利ですが、店側は「理由がないと選ばれない」状態になります。
厳しいのは、味や価格だけで差がつかないことが増えた点です。評価、提供速度、入りやすさ、メニューの分かりやすさ、店の強みの伝え方。こうした“体験の設計”が弱いと、平均点の店は埋もれやすくなります。
差別化というと大げさに聞こえますが、実務では「誰に、何を、どういう状況で食べてほしいか」を絞ることです。
資金繰りの難しさ|黒字でも現金が残らないことがある
飲食店の怖さは、利益より先に現金が尽きることです。帳簿上は黒字でも、借入返済、税金、設備更新、支払いのタイミングが重なると、現金が減ります。
仕入れや人件費の支払いは待ってくれないので、資金繰りが詰まると、良い打ち手を考える余裕がなくなり、短絡的な値下げや無理な広告に走ってしまうことがあります。
資金繰りが厳しいときは、売上を伸ばすより先に「月次の固定的な支払い」と「現金が減る週」を把握することが最優先です。
支払い遅延の兆候が出る、仕入れ条件が悪くなる、返済が重く感じる。こうしたサインがあるなら、まず現金残高と支払いスケジュールを見える化し、延命策を打てる状態に戻すほうが被害を小さくできます。
まとめ|厳しさは構造
飲食店が厳しいと言われる理由は、気合や才能ではなく、売上側とコスト側の構造が同時に揺れていることにあります。原材料費・光熱費・人件費が一緒に上がれば、以前と同じやり方では利益が残りにくくなります。
客数の波が大きくなり、集客導線がオンライン寄りになると、売上は読みづらくなります。競争が激しくなるほど、店の強みや体験設計が曖昧な店は比較で埋もれやすくなります。
さらに、黒字でも現金が減る資金繰りの問題が重なると、判断ミスを誘発しやすくなります。ただし、構造で説明できるということは、構造で直せるということでもあります。




