「飲食店って、どこからが飲食店なの?」と調べ始めると、言い方が人によって違っていて戸惑いやすいですよね。日常会話では「お店で食べたり飲んだりできる所」を指すことが多い一方で、開業や手続きの場面では、食品衛生法にもとづく営業許可の要否や区分で話が進みます。
この2つが混ざると、「テイクアウト専門は飲食店?」「デリバリーだけなら違う?」のように判断が揺れがちです。
そこで本記事では、言葉としての「飲食店」と、行政手続きで問われるポイントを切り分けて整理し、あなたの営業形態がどの枠に入りやすいかを自分で見立てられるようにまとめました。
飲食店の定義を整理する

「飲食店」という言葉は、普段の会話だと広く使われますが、開業や手続きの場面では“呼び名”より“やること”が重視されます。
まずは、日常用語としての意味と、法律・行政手続きで見られるポイントを分けて整理すると迷いが減ります。
| 観点 | よく使われる意味 | 迷いやすい例 |
|---|---|---|
| 日常用語 | 食べ物・飲み物を売り、食べる機会がある店 | テイクアウト専門も「飲食店」と呼ぶか |
| 法律・行政手続き | 食品を扱う行為が許可や届出の対象か | 店内飲食がなくても許可が要るか |
一般的な定義|対価を得て飲食物を出す商売
日常用語としては、「お金を受け取り、食べ物や飲み物を用意して客に出す商売」という理解がいちばん近いです。判断の軸になりやすい要素をまとめると、以下のとおりです。
- 対価を受け取るか
↳商売として行うかどうか - 店側の作業が入るか
↳加熱・盛り付け・カットなどの有無 - 食べる機会をつくるか
↳店内の席、近くのベンチ、イベント会場など - 主役が「食事」かどうか
↳雑貨のついでの試食か、食事が目的か
会話上は、カフェや居酒屋だけでなく、屋台やキッチンカーも飲食店と呼ばれがちです。ただし、この感覚だけで手続きの要否は決まりません。

法律・行政の観点|渡し方で許可の要否が変わる
手続きでは、「飲食店という名前か」ではなく「その場所で何をして、どう渡すか」が中心になります。とくに相談で話が早く進むのは、次の情報が整理できているときです。
| まず見る点 | 例 | 相談で伝える言い方 |
|---|---|---|
| 調理の有無 | 加熱、味付け、盛り付け、カット | 「現地で加熱まで行う/盛り付けだけ行う」 |
| 渡し方 | 店頭、配達、イベントで手渡し | 「店頭で包んで渡す/配達のみで渡す」 |
| 食べる場所の想定 | 店内席、屋外席、共用スペース案内 | 「席を置く/席は置かないが近くで食べられる」 |
| 営業場所と設備 | 店舗、間借り、キッチンカー、イベント | 「この設備(手洗い・シンク等)でこの作業をする」 |
「飲食店に当たるか」を先に聞くより、「この場所で、この作業をして、この渡し方をしたい」と伝えたほうが、必要な許可や設備の話に直結しやすくなります。
似た言葉との違い|食品販売・製造・ケータリングとの境界
混ざりやすいのが「食品販売」「食品製造」「ケータリング」です。まず食品販売は、仕入れた食品をそのまま売る寄りの言い方で、店側の作業が増えるほど手続きや設備の話に移ります。食品製造は、工房や加工場で作って流通させる寄りで、店内で食べさせる前提が薄いケースが多いです。
ケータリングは、外部の場所に料理を運び、現地で配膳したり盛り付けたりと“現場対応”が絡みやすい点が特徴です。同じ料理でも、どこで仕込み、どこで仕上げ、どこで渡すかで扱いが変わりやすいので、言葉のイメージで決めないほうが安全です。
また「喫茶店」「居酒屋」は生活上の呼び方で、許可の区分と一対一で結びつくとは限りません。看板の業態名ではなく、実際の作業内容と設備から整理すると、判断のズレを減らせます。
ケース別に見る飲食店の定義にあたるか

同じ「食べ物を売る」でも、店内で食べさせるのか、持ち帰りだけなのか、移動販売なのかで、見られ方が変わります。大事なのは業態名より、調理の有無・渡し方・場所・設備です。
| ケース | 典型例 | 見られやすいポイント |
|---|---|---|
| イートインあり | カフェ、定食屋、居酒屋 | その場で食べる前提の設備・動線 |
| テイクアウト・配達のみ | 弁当、惣菜、ゴーストレストラン | 店内飲食がなくても調理の実態 |
| キッチンカー・イベント | 移動販売、屋台、催事出店 | 場所ごとの運用、設備要件 |
| 間借り・シェア | 夜だけ借りる、共同厨房 | 許可名義と責任分界 |

イートインあり|店内で食べさせる場合
イートインがある形は、生活感覚でも「飲食店」と言われやすく、行政手続きでも“その場で食べる前提”が強くなります。
判断がズレやすいのは、「席が少ないから大丈夫」「立ち食いだから違う」といった思い込みです。席数ではなく、食べる場所を用意しているか、提供の動線がどうなっているかが焦点になりやすいです。
- 客が食べる場所を設けるか
↳店内席、カウンター、店前ベンチなど - 店内での提供を前提にした作業があるか
↳盛り付け、加熱、飲料抽出、洗浄など - 食器の扱いがどうなるか
↳使い捨て中心か、繰り返し使用か - 客導線と作業導線がぶつからないか
↳手洗い、配膳、返却口などの配置
イートインを置く予定なら、早い段階で「席の形(テーブル、カウンター等)」「提供の流れ」「厨房でやる作業」を言語化しておくと、相談がスムーズになります。
テイクアウト・デリバリーのみ|店内飲食がない場合
店内飲食がないと「飲食店じゃない」と思われがちですが、手続き上はそう単純ではありません。むしろ、厨房で調理して完成品として売るなら、店頭か配達かにかかわらず見られるポイントは似てきます。逆に、仕入れた包装食品をそのまま売る寄りなら、話が変わりやすいです。
| やりたいこと | 例 | 判断の分かれ目になりやすい点 | 自分で整理する質問 |
|---|---|---|---|
| 厨房で調理して売る | 弁当、惣菜、出来立てスープ | 加熱・味付け・盛り付け等の作業 | 「現地で何の作業をする?」 |
| 仕入れ品をそのまま売る | 包装菓子、瓶飲料 | 加工をしない(開封・小分けの有無) | 「開ける?分ける?温める?」 |
| 配達のみで渡す | ゴーストレストラン | 店内飲食なしでも調理実態と設備 | 「どこで仕込み、どこで仕上げる?」 |
| イートインを後から追加 | 小さなカウンター設置 | 食べる場所の新設で見られ方が変わる | 「店前で食べられる前提になる?」 |
テイクアウトと配達は「渡し方」の違いで、許可の要否そのものを決める主役になりにくいことが多いです。主役は、どの場所でどんな作業をして食品を完成させるかです。

キッチンカー・イベント出店|場所が変わる場合
場所が固定されない形は、店舗型と比べて「どこまで車内・現地で作業するか」「給排水や手洗いをどうするか」「営業できる区域や条件は何か」が論点になりやすいです。イベントは単発でも、提供内容によって届出や条件が付くことがあり、「短期だから不要」と決め打ちすると危険です。
- 仕込み場所はどこか
↳車内で完結か、別の場所で仕込みをして持ち込むか - 現地での作業は何か
↳加熱、盛り付け、トッピング、小分けなど - 給排水・手洗いの確保方法
↳タンク容量、手洗い設備、排水の取り扱い - 温度管理と保管方法
↳保冷・保温、食材と完成品の分離 - 出店先のルール
↳自治体や主催者の条件、営業区域
先にこの5点が整理できていると、相談相手が自治体でも主催者でも話が噛み合いやすくなります。
間借り・シェアキッチン|許可名義と責任分界が重要
間借りやシェアは、設備が整っているぶん始めやすい反面、手続きのつまずきが「誰の許可で、誰が責任を負うのか」に集中しがちです。特にトラブルになりやすいのは、許可の名義と運用実態がズレるケースです。
| 確認項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| 許可の名義 | 行政上の責任主体が決まる |
| 使える範囲 | 作業内容が許可範囲を超えると問題になり得る |
| 衛生管理の分担 | 事故時の責任が曖昧だと揉めやすい |
| 食材・備品の保管 | 混在すると事故や誤使用につながる |
| 設備トラブル時の対応 | 営業継続と安全に直結する |
間借り・シェアは「場所があるから安心」になりやすいですが、許可の名義と運用ルールを先に固めておくほど、後からの修正コストが減ります。
まとめ|定義より提供形態を固めて保健所で確定する
「飲食店の定義」を言葉だけで追いかけると、日常用語の幅広さと、手続きでの判断基準が噛み合わずに迷いやすくなります。
普段の感覚では、店内で食べられる店を飲食店と呼ぶことが多い一方で、手続きの場面では「どこで、何を、どの程度調理し、どう渡すか」が中心です。店内飲食がない形でも、厨房で調理して売るなら許可の話に直結しやすく、逆に仕入れ品をそのまま売る寄りだと整理の筋道が変わります。
開業前にやるべきことは、店名や業態名を決める前に、自分の提供形態を分解して言葉にすることです。調理の作業(加熱、盛り付け、カット等)、渡し方(店頭、配達、イベント)、営業場所(店舗、間借り、キッチンカー)を整理できると、必要な設備や衛生管理もセットで見えてきます。




