~解約通知と譲渡募集のタイミング管理/賃貸契約の縛りと違約金リスクを正しく理解する。退去と売却、どちらを先に動かすべきか?
飲食店や美容室などのテナント事業者が撤退を検討する際、多くの経営者が悩むのが「退去通知を出すタイミング」と「譲渡希望者への募集タイミング」の関係です。
契約期間の縛りや原状回復義務、違約金など、賃貸契約の条件と整合しないまま進めてしまうと、譲渡が成立せずに損失だけが残る結果にもなりかねません。
賃貸借契約上の「解約予告期間」とは?

店舗物件では、一般的に『●ヶ月前予告』が契約条項に定められています。たとえば「6ヶ月前予告」の場合、退去予定日の6ヶ月前までに書面で解約の意思を通知しなければなりません。
これを守らなかった場合、『予告期間に相当する賃料の違約金』が発生する可能性があります(違約金条項がある場合)。
よくある失敗例:退去通知を出さずに譲渡募集をかける
譲渡希望者が決まってから解約通知を出そうとするケースでは、以下のリスクが潜みます。
- 貸主が譲渡に難色を示し、承諾が得られず頓挫
- 引渡し時期が読めず、買主が離脱
- 契約が成立した後に予告期間不足で違約金が発生
→売主が譲渡代金を得られず、かつ原状回復義務を負うという二重苦になることもあります。
逆に「早すぎる退去通知」にも要注意
退去通知を出してしまうと、残りの賃貸期間が限定されるため、その間に買主が決まらなければ撤退時に内装や設備を撤去(スケルトン)して明け渡す必要が出てきます。
→結果として、譲渡できないままコストだけが膨らむこともあります。
ベストな進め方:退去と売却は“同時並行”で戦略的に
- 賃貸借契約の内容(予告期間・違約金)を正確に把握
- 退去通知前に、貸主に『譲渡の予定がある』ことを非公式に相談
- 譲渡募集と内見を進めながら、承諾取得と解約通知をセットで行う
このように、貸主との信頼関係を維持しつつ、タイミングを慎重にコントロールすることで、譲渡成立率が格段に上がります。
契約書・交渉のチェックポイント
- 解約予告条項:●ヶ月前予告か?明け渡し時期は交渉可能か?
- 譲渡承諾条項:造作譲渡に貸主の書面同意は必要か?
- 違約金条項:予告期間を満たさなかった場合の損害額は?
- 原状回復義務:譲渡成立時にはスケルトン工事は不要か?
藤間崇史弁護士のワンポイントアドバイス
店舗退去と譲渡のスケジュール管理を誤ると、譲渡益どころか違約金や原状回復費用で赤字になることもあります。
最善策は、“契約と貸主の意向を把握したうえで”、譲渡の見通しが立った段階で『交渉・通知・契約締結』をセットで動かすことです。
仲介業者をうまく活用し、売却スケジュールと法的要件のギャップを埋めることが、損をしない撤退の鍵になります
まとめ:タイミングの管理が「高値売却」の成否を分ける
店舗売却において、退去通知と譲渡契約の順序・時期を読み誤ると、売却機会を逸し、不要な費用負担が発生する可能性があります。
だからこそ、“タイミング設計こそプロの仕事”。契約と実務の間を読み解ける専門家の関与が、安心・安全な譲渡を実現します。


