ダクト工事の費用はどれくらい?相場とコスト削減のコツを解説!

ダクト工事 目安の費用

換気や排煙を支えるダクトは、日常では目立たないものの、住まいや店舗・工場の安全と快適さを左右する重要なインフラです。

しかし、いざ改修や新設が必要になると「結局いくら掛かるのか」「業者の見積もりは妥当なのか」と不安が尽きません。工事項目は専門用語が並び、追加請求のリスクも頭をよぎります。

そこで本記事では、物件別の相場から見積書の読み取り方をまとめました。

このページでわかること

  • 住宅・店舗・工場別のダクト工事費用相場
  • 見積書の項目ごとの金額チェック方法
  • 追加請求を防ぐ質問と確認のコツ
  • 予算を下げる具体的な発注タイミングと工夫
  • 助成金や減税制度の申し込み手順
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目次

ダクト工事の費用相場と内訳

ダクト工事にかかる金額は、物件の用途・規模・配管経路・採用する工法で大きく変動します。まずは代表的な価格帯と内訳を把握し、各項目が自分のケースに近いかを検証することが適正価格への近道です。

住宅・店舗・工場別の価格帯

物件種別ごとに想定される延長とおおよその総額をまとめました。床面積・換気量を平均的な条件として計算しています。

物件種別ダクト延長(m)概算費用(税込)ポイント
戸建て(100㎡前後)20〜4035〜70万円天井裏に空間があれば施工しやすい
マンション1室(80㎡前後)15〜3030〜60万円共用ダクトを流用できる場合は低コスト
飲食店舗(約30坪)40〜8080〜150万円排煙ダクトは耐熱仕様が必要
中小工場(約200坪)100〜200250〜500万円油煙・粉じん対策で付帯設備が増加

同じ延長でも仕様や搬入経路で上下幅が出る点を念頭に置いておきましょう。

材料費・人工費・諸経費の内訳解説

見積書は大きく三つの費用で構成されます。色分けして比較すると過剰な計上を見つけやすくなります。

  • 材料費
    ↳ダクト管・継手・保温材など資材の購入費。ステンレスや亜鉛めっき鋼板など素材で価格差が出る。
  • 人工費
    ↳配管・吊り金具取付・保温工の作業賃。夜間や高所作業は割増が付きやすい。
  • 諸経費
    ↳運搬費・廃材処分費・現場管理費など雑費の合計。割合で計上される場合は総額の7〜15%が目安。

項目が細かく分かれているほど後から追加請求が発生しにくい傾向があります。

工法別(フレキ・スパイラル)の単価比較

採用する工法によって材料・施工時間が変わり、1mあたりの単価も変動します。

スクロールできます
工法特徴主な素材単価の目安(1m)
フレキダクト柔軟で曲げやすい
短工期
アルミ・樹脂1,200〜2,000円
スパイラルダクト耐圧性・気密性が高い
長尺で直線向き
亜鉛めっき鋼板1,800〜3,500円

曲線が多い経路はフレキ、直線主体で外観をそろえたい場合はスパイラルが有利となるケースが多いです。

ダクト工事の見積もり取得から契約までの手順

ダクト工事の成功は、現場調査から契約書締結までの流れを整理できるかにかかっています。以下では「同条件での見積もり取得」「数字の比較」「約束の書面化」という三つのステップを軸に、失敗しにくい手順を解説します。

現地調査でチェックすべきポイント

調査時は「搬入しやすいか」「撤去が大がかりにならないか」といった費用に直結する要素を抑えることが大切です。代表的な確認事項を表に整理しました。

チェック項目見落としがちな理由費用インパクト(例)
搬入経路の障害物階段幅・EV寸法は図面と実寸が異なることがある養生・小運搬で +1〜3万円
既存ダクトの汚れ・腐食外観から内部の油汚れが判別しにくい撤去・洗浄で +2〜8万円
天井裏の高さと配線密度配線が増設されているケースが多い人工増で +15〜25%
外壁貫通部の構造ALCや石材パネルは穿孔に専用刃が必要専用工法で +5千〜1万円/穴
排気ルートの終端屋上設備の占有状況を事前確認しない足場・耐候部材で +10〜30万円

スマホ撮影で状況を共有しながら進めれば、後日の追加工を最小限にできます。

見積書を読み解くチェックリスト

複数社の書類を横並びに置き、色分けしながら比較すると差異が一目瞭然になります。以下の順序で進めると無駄な時間を削減できます。

  1. 材料費・人工費・諸経費を3色のマーカーで分割
  2. 同一項目の数量と単価を表計算ソフトに転記
  3. 単価が2割以上乖離しているセルにハイライト
  4. 疑問点を業者へメールで質問し、回答を追記
  5. 見積日と有効期限を確認し、スケジュールと照合

質問へのレスポンスが早い会社ほど工程管理も丁寧な傾向があります。

追加費用を避ける質問テンプレート

契約前に「場合分け」を明文化すると、後日の請求リスクを抑制できます。想定シナリオ別に質問例をまとめました。

想定シナリオ質問例
撤去ダクトの処分費「処分費は総額に含まれていますか」
夜間・休日作業の割増「割増率の上限を決められますか」
設計変更による追加部材「単価だけ先に提示できますか」
排気試験の再調整「基準未達時の再調整は無償ですか」
保証・アフター点検「保証期間と点検頻度を教えてください」

数値と書面、両方で合意を取ることがトラブル防止のために大切です。

ダクト工事の費用を左右するポイント

同じ延長でも工事費が数十万円単位で変わることがあります。その差を生む主因は「物件の形状・作業条件・機器のグレード」。ここからは代表的な7項目を取り上げ、どのように価格が増減するかをひも解きます。

物件の構造とダクト経路

配管ルートが複雑になるほど、材料も人工も増えがちです。実際に費用を押し上げる場面を整理しました。

  • 梁や柱が多い構造
    ↳経路が曲線だらけになり継手が増加
  • RC造で壁貫通が多い
    ↳穿孔に専用機材を用いるため施工時間が延びる
  • 機械室が建物中央に配置
    ↳排気までの距離が伸び、ダクト量が倍増

設計段階から最短経路を検討すれば、後の追加見積を抑えやすくなります。

天井高・開口部条件

高さと開口部で必要な足場や搬入手段が変わり、工賃に直結します。

条件必要な準備費用幅の目安
天井高3.5m超可搬式足場を常設+5〜10%
サッシ開口600mm以下部材の分割搬入+3〜7%
外壁開口新設コア抜き・防水補修+2〜5万円/箇所

図面で確認しにくい細部は、現地調査時にメジャーで実測してもらうと安心です。

夜間・休日工事の割増

営業時間と重ならないタイミングで工事を頼むと、割増賃金が発生します。抑えどころを押さえておきましょう。

  • 夜間作業(22:00〜翌5:00)
    ↳基礎賃金×1.25が一般的
  • 日曜・祝日工事
    ↳基礎賃金×1.35前後
  • 騒音規制地域でサイレント機材を使用
    ↳機材レンタル費 +2万〜

近隣への通知と合わせ、工程表に割増率を書面で残すことが後々役立ちます。

既存ダクト撤去と廃材処分

古い配管を外す工程は、新設より手間がかかる場合があります。処分ルート別に相場をまとめました。

撤去対象主な作業概算費用
鋼製スパイラルφ200ガス切断・2人作業1,000〜1,500円/m
フレキダクトφ150手工具で分割撤去300〜600円/m
耐油フード付き排気高圧洗浄→解体1.5〜2.5万円/台
保温材(グラスウール)剥離・産廃仕分け500〜800円/㎡

スクラップ金属の売却額を差し引けるケースもあるため、事前に見積へ反映させたいところです。

省エネ機器・断熱材の選択

初期費とランニングコストのバランスを見極めると、長期的な支出を下げられます。

  • 高効率DCモーター換気扇
    ↳消費電力量が従来比30%減
  • 外気温センサー連動制御
    ↳シーズンオフは自動で風量ダウン
  • 高断熱グラスウール25mm
    ↳外気温10℃差で結露リスク低減

省エネラベル付き機器は補助対象になりやすく、後述の減税とも相性が良いです。

スマート換気システム導入

IoT連携を組み込むと導入費は上がるものの、維持費と安全性で恩恵があります。

機能構成例追加費用の目安
CO₂センサー自動制御センサー×1、制御盤×1+8〜12万円
グリス濃度モニタリング光学センサー×3+4〜7万円
遠隔異常通知(4G)LTEゲートウェイ×1+5千円/月(通信)

アラートが業者へ自動送信される仕組みを入れれば、重大トラブル前に駆け付けてもらえる安心感があります。

助成金・減税制度の活用

国や自治体の制度を使えば、補助率次第で10〜30%相当を取り戻せます。申請時の押さえどころを整理しました。

  • 省エネ改修促進補助
    ↳機器費の1/3・上限150万円
  • 中小企業経営強化税制
    ↳即時償却または税額控除10%
  • 商店リニューアル補助(自治体)
    ↳上限50万円、年度予算制
  • 申請タイミングは「契約前」必須
    ↳契約後着工分は対象外になる

条件を満たすかは都道府県で変わるため、窓口へ事前相談すると手戻りを防げます。

まとめ|適正価格で後悔しないダクト工事を

ダクト工事の費用は物件の用途や配管経路、工法、作業条件によって大きく変動します。本記事では、住宅・店舗・工場それぞれの相場を把握し、材料費・人工費・諸経費に分類して比較する方法をまとめました。現地調査では搬入経路や天井裏の空間を事前に確認し、複数業者から同条件の見積書を取得する段取りが鍵となります。

実際に発注する際は、割増賃金や撤去費が発生する場面を洗い出し、単価と数量を契約書へ明記することで後日のトラブルを防げます。また、補助制度の申請は契約前に行う必要があり、書類の不備が工期を延ばす原因となりやすいため早めの段取りが重要です。

この記事を書いた人

出水祐介のアバター 出水祐介 公認会計士/税理士

公認会計士/税理士。ファーストキャリアをデロイトトーマツでスタートし、日本を代表する大手上場企業の監査に携わる。その後、ベンチャー企業でCFO(最高財務責任者)、コンサルティング会社でM&A事業責任者を経て、会計事務所を設立。現在は、個人事業主やベンチャー企業、中小法人など、幅広いクライアントに対して、会計税務やM&Aの専門的なアドバイスを提供しています。

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